私立秀麗華美学園
「笠井家の、会社の規模は知っているだろう?」


もちろんだ。ゆうかが笠井に助けられたあの事件の後、参考までにと雄吾がすかさず調べてくれた。

とりあえず笠井家は歴史が長い。笠井進(ちなみにススム君、ではなく、シン)は先祖が天下分け目の戦いで命を落とした武将だとか自慢していた。命を落としたんなら自慢にならないのではないかとその時俺は思ったが。

その昔から成長を続けた笠井家の総資産は今でも増加し続けている。ただゆうかの花嶺家とはどちらかと言えばライバルと言える関係にあったので、俺は心底ほっとした。


「この間の一件の後、調べたんだ。一応。風來と笠井じゃ、方向性は全く違うので、関わりはないはずだが、どうも心配で」


雄吾はキーボードを少し叩いてから、俺にパソコンの画面を向けた。


「見ろよ。風來の株価の変動だ。あの事件の日以来、下降傾向にある」

「ほんとだ」


株価とか、詳しいことはよくわからない俺にも、グラフが下に傾いているということだけは嫌でもわかる。


「笠井雅樹は長男だ。そして父親のお気に入りで、発言の影響力が極めて強い。やめておくべきだったんだ。俺の性格を知って、これを見るのを見越しての嫌がらせなのかもしれない」


雄吾はいかにも後悔した様子でため息をついた。


「でも、あれはPAKの制度がある以上、避けられない事態なんじゃ……」

「いや、平和に和解する方法をとるべきだった。俺の行動が、軽率だったんだ」


雄吾は額にしわを寄せ、俯いた。俺はなんともいたたまれない気持ちになった。雄吾にはいつも、先を見越したような、自信に満ちた顔をしていて欲しい。


「でも、たったあれだけで」

「仕方ないだろう。俺たちよりもはるかに異常な環境で育った御曹司だ。何を起こしたとしたって。そんなことよりも、俺は……」


野性の勘が働く。胸に嫌な予感がよぎった。


「か、笠井に目をつけられたんじゃなあ……誰だって……」

「いや、俺は……こういう時が来るんじゃないかと、ずっと思っていた。そんな時に俺じゃ、咲を守れないんだ」


ほら、やっぱり。


「俺は咲の騎士に、相応しくない」


野性の勘は、こういう時ばっかり当たるんだ。
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