私立秀麗華美学園
先ほどのやり取りのあと、ハート寮の電話に繋いでもらい、ゆうかを食堂に呼び出した。
そしてことのあらましを説明する……つもりだった。


「知ってるわよ」


が、しかし、この通り説明の必要は皆無だった。
なんでこんなに行動が早いんだろうか。ゆうかの1日は30時間ぐらいある気がする。


「そりゃ、そんなもんよねえ……笠井雅樹だものねえ……あいつが現れたあと、部屋で
1人の時に調べたの。だから咲は、気づいてはいないはずよ」

「そっか」


この前から思っていたが、ゆうかの、笠井雅樹をフルネームで呼ぶ呼び方には、いやに軽蔑が込められている気がする。


「でも、雄吾も思いつめすぎじゃない? 何もそこまで」

「いや、雄吾の気持ちは、わからないわけじゃ、ないし……」


自分の軽率な行動のせいで、花嶺に打撃を与えることになると考えたら……。
騎士解除なんて死んでもしないが、相当思いつけるだろうなあとは思う。


「……そっか。騎士だものね。姫を守る為につけられた、称号なのよね」


ゆうかは考えに耽る俺の顔を覗き込んで言った。
俺の気持ちを知ってか知らずか、その顔は微かに微笑んでいた。


「それでも、風來の株価だって、そこまで大きく変動しているわけでもないし……どんな風に笠井雅樹が親に知らせたのかは、想像できないけど」

「でもこれを思うと、笠井進の方はそんな姑息な手段は使ってこなかったよな」

「本人に聞いてみたのよ。なんだか、弟の方は、父親とあまりうまくいっていないみたい。やっぱり会社を継ぐのは長男だろうしね」


なるほど。父親にひいきされている長男は、どんな立ち振る舞いをしたところで、どこからもお咎めなしというわけか。


「どうしたものかしらねえ……咲は咲で、毎晩のようにぐちぐち言ってるわ」

「咲としては、構わないんだろうけどな」

「もちろん。咲が雄吾を思う気持ちは、その本当の大きさは、きっと本人だけにしかわからないほどのものだと思う」


そう言ったゆうかは、わが子のことを語る母親のような面持ちだった。
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