私立秀麗華美学園
「でも、雄吾の本心って、あんまりよくわからないのよねー」


言って再び沈んだゆうかに、俺は何も答えなかった。

本当を言えば、いつも一緒にいる俺には、雄吾の本心の想像はつく。
雄吾は咲を心配もしているし、俺がゆうかを思うのと同じように咲を大事に思って、守りたいと思っている。

咲のことを話す口ぶりや、今回のことで咲の身を案じる態度からも、それが的外れな考えであるはずはない。

それをゆうかにそのまんま教えることもできる。
だけどそれを咲やゆうかが知る時は、雄吾の口からでなければいけない気がした。


「ちょっと喧嘩しただけで、株価の変動がどうなっただの、一般の高校生には関わりのない悩みなのにね」


ゆうかは上品にため息をついた。
確かにこういう家柄に生まれなければ、決して持つことのない悩みだっただろう。
しかし、俺が月城家に生まれなければ、ゆうかと出会うこともなかったのか、と考えると、情けないほどにぞっとした。


「世知辛い世の中だよなあ……俺たちだって、5年も前はテストのことでも考えてりゃいいだけで……」


はっ、またしても超絶じじ臭いことを口にしてしまった。
やっぱり、ゆうかはクスクスと笑った。


「和人の言うこと、お父さんと似てるのよね」

「え?」

「世知辛いとかさあ。なんでだろうね。そういえば、長いこと会ってないなあ……高等部進学祝い以来だから、1年以上ね」


ゆうかの父親、花嶺淳三郎。グローバルな会社とまではいかないとはいえ、その社長ともなれば、その名は各界の大物に知られている。

この人は、俺が苦手とする人間のトップ3には入るだろう。
昔気質の立派な人間であられるが、少々お年を召しておられる。俺はいつも、その古風な考え方に調子を合わせるので精一杯だ。

とは言え仮にも婚約者の父親であるので、そんな態度を本人の前で晒すことのないよう、俺はいつも必死である。


「苦手なんだよなあ……あの人」

「そんなこと言ってちゃだめでしょ。夏休みぐらいには、また顔見せに行かなくちゃね」


少し気の重くなるような話もしつつ、結局どうするか明確には決められないまま、その日の相談は、各々自分の部屋へ持ち帰ることになった。







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