私立秀麗華美学園
「何か御用でございましょーか」


咲は下唇を突き出し、水沢に向かって嫌味ったらしく尋ねた。


「依頼、当然受けるわよね。ほら、受け取るがいいわ」


そう言うと、水沢紗依香は背中に隠していた右手を振り下ろし、札束を床にたたきつけた。足先で紙幣が翻り、ぱしーんと大きく響く。


「……これは」

「依頼料よ。400万、ぴったりあるわ」

「桁違いをなされているようですが」

「桁違い? 一文字の間違いじゃなくって? あんたたちのしょぼくれたホームページに載ってた依頼料、400円になってたわよ。打ち間違いだってことぐらい猿にだってわかるわ」


親切な心遣いをどうもありがとうございます。
猿がどう思おうが、依頼料は記載通りなのだ。


「結構です。私たち、そこまでお金に困ってはいませんので」

「依頼料が必要ないの? それならそれで、まあいいわ」


ゆうかの笑いを堪えながらの丁重な態度にも気づかずに、水沢は無造作に札束を拾ってふところにしまった。そんなんだから金持ちのお嬢様は誘拐とかに遭うんだろうが。


「ご依頼の方は、検討中ですので」

「断るなんて言わせないわよ。やっと雄吾様が、そこにいるお子様から解放されなくなったというのに」

「お子様あ!?」

「そうよ。やっと周りをうろちょろしなくなったところなんだから」

「はあああ!?」


ついに咲の堪忍袋の緒が切れた。
立ち上がって、水沢の襟首に手を伸ばす。


「あたし、雄吾の姫なんですよね。あんたみたいなじゃじゃ馬にお子様呼ばわりされるいわれはないし、雄吾との仲を取り持つなんて、いくら出されたってごめんやわ!」


よろめきつつ、水沢は力任せに咲を振り切った。

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