私立秀麗華美学園
もちろん咲が言っていたようなことはあり得ないとわかっているが、とりあえず、水沢紗依香について、雄吾の見解をうかがうことにした。
ゆうかと話をして、部活が終わる頃を見計らい、寮へ帰る。


「雄吾、いるかー?」


ドアを開くと、机の上に、雄吾のかばんはあった。
が、しかし肝心の本人の姿はない。いつもならパソコンの前に座っているはずなのに。

食堂にしては早すぎるよなあと思いつつドアを開ききった瞬間、ドアの裏側から鈍い音がした。


「……痛い」

「ぎゃっ!」


またこれしきのことで叫び声を上げてしまった……雄吾がドアの裏で体育座りをしていただけだというのに……って、十分異常だよな、これは。


「な、何を」

「……瞑想」


多趣味なやつだな、本当に。


「……あのさあ、いきなりなんだけど、お前のクラスに水沢紗依香ってやつ、いるよな?」

「ああ、顔は思い出せないが、やたらと髪の長い、じゃじゃ馬だな。それが?」

「あ、もういいです」


ストレートすぎて笑える。
咲の言っていたような心配はもちろん、今後雄吾の方から声をかけることすらなさそうだ。


「いい加減、咲避けるのやめろよな。あらぬ誤解を抱かれて」

「誤解じゃないだろう、別に。で? 水沢がどうした。わざわざ聞いて、何もないわけがない」


めんどくさい奴だなあ。なんでもないよ。そうか。で、終わりでいいだろうが。


「依頼か」

「……なんでまた」

「お前の口からゆうかと咲以外の女の名前が出ることなどそうそうない。ここまでぞっこんの騎士も珍しいだろうな」


ほっといてください。


「で、相手は誰だ」

「相手はあ、かっこよくてえ、クールでえ、多趣味でえ、割と挙動不審な……」

「誰だよその変なやつ」


鈍感な、鳥居雄吾朗くんであらせられます。
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