私立秀麗華美学園
「わかんねえなら教えてやんね」

「言いたくないなら、別に構わないがな」


雄吾はどうでもいいという風にため息をつき、よっこらしょと腰をあげた。
ベッドに座りなおし、目を伏せる。


「……俺は、間違っているか?」

「え?」

「もし、お前が俺の立場だったら、どうする。俺は、固過ぎるから」


雄吾は真剣に、自分の頑なさが正しいのかどうか、断定しかねている。
自分は間違っているか、などと雄吾に問いかけられたのは、初めてのことだった。


「それは、実際なってみないと、わかるもんじゃねえと思うけど……」


かけたい言葉を見つけられない。
いつも雄吾は、俺の質問や悩みに本気で頭働かせて、一緒に考え、悩んでくれた。
こんな時、自分の幼さが歯痒い。

その時ふっと、俺の小さな脳みそに、前に雄吾が言ってくれた言葉が蘇った。


「――恋愛感情を持った人間は」

「え?」

「利己主義であって当然だ」


意表を突かれた様子で、雄吾は俺を見た。


「前に、雄吾が言ってくれた。俺が笠井とのことで、悩んでた時。自分が大事、自分の気持ちが最優先って。自己中心的で、いいんじゃねえのかよ」


記憶の糸を手繰るように、雄吾は宙を見つめ、そして、微笑んだ。
やっぱ、自分の発言には責任持ってもらわねえと。


「……そうだったな」


雄吾は立ち上がり、かけていた眼鏡をはずした。


「いつもとは、正反対だ」

「たまには恩返ししねえと」


目を合わせ、微笑を交わす。


「善は急げっていうだろ。咲のところ、行ってこいよ。ゆうかと食堂にいるはずだから」

「善の字も書けないような奴に、言われるとはな。……そうだな、行ってくる」


そう言うと、雄吾はいつもの調子で部屋を出て行った。
いつもの余裕をもった、大人びた姿の雄吾に戻ってくれて、俺は嬉しかった。


でもな、俺。
善の字ぐらい、書けるから……。
< 118 / 603 >

この作品をシェア

pagetop