私立秀麗華美学園
俺が2人のもとに辿り着いた時には、矢は固いグラウンドに深々と突き刺さり、細かくその身を震わせていた。


「ゆうか!」

「和人……」

「だ、大丈夫か?」

「私は…………えっ!? 笠井!?」


後ろを向いたゆうかは、肩を押さえた左手の指の間から真っ赤な血を滲ませ、うずくまっている救世主の姿に目をみはった。


「大丈夫!?」

「矢……かすめた、だけ……」

「かすめただけって、お前……」


抑えようとしても声が震えた。
笠井の着ていたバスケ部のユニフォームを破ると、深い傷口が顔を出した。


「わ、私、医務室の先生呼んで来る!」


顔を蒼白にしながら、ゆうかは機敏な行動をとった。

出血量がおびただしく不用意に笠井を動かすことはためらわれたため、ゆうかの行動は一番正しかったのだと思う。



俺は目の前に広がる血だまりをただ見つめていることしかできなかった。

本当に、何も。
できなかった。


必死な顔をして保健医を連れて来るゆうかの姿が見えるまでに俺がやったことといえば、笠井に小さく礼にを言ったことと、自分を責めて恥じ入ることだけだった。
< 12 / 603 >

この作品をシェア

pagetop