私立秀麗華美学園
「呼ぼうよ、ねえ、和人、呼んで」


ゆうかはテンションが上がると時々少女ちっくな喋り方になって可愛い。


「おーい、雄吾ー!」


リクエストにお応えして雄吾を呼ぼうと試みるが、店の喧騒に埋もれてか声は届かない。


「雄吾ー!」


雄吾はカウンターの隣で、メニュー表を抱えて立っている。顔があさっての方向を向いていて、怪しい。


「ゆーうーごーっ!」


立ち上がって叫ぶも、無反応。


「……絶対聞こえてるわよね」

「と、り、い、ゆ、う、ご、ろ、お!」


しかし雄吾は微動だにしない。こうなったら最後の手段だ。


「にーじゅーうじーんかーくー……」


物凄い勢いで雄吾の首がまわされ、俺たちに剣呑な表情が向けられた。
そしてそのままの勢いでつかつかと近づいてくる。
あまりの剣幕に俺は身じろいた。

雄吾は俺の目の前で止まると、恐ろしい表情のままの顔を近づけて言った。


「おきゃくさまああ、ごちゅうもんはあ?」

「……いやいやいやいや」


どうどうどう、と両手で雄吾を制す。まさかここまできき目があるとは思わなかった。


「あれ、そんなに気にしてたん? 雄吾」


咲が不思議そうに聞く。


「……和人から、聞いた」


雄吾は息をつくと、渋い顔で言った。

俺は知っている。あの時の雄吾の豹変ぶりを後から俺が寮で話した時、雄吾はとんでもなくショックを受けた。
というか、恥ずかしがっていた。机に片腕をついてうなだれた。そして、ちょっとしたトラウマにまでなってしまったのだった。


「鳥居雄吾朗、一生の不覚だな」

「お前に言われる筋合いはない」


もっともなことを言われ、俺はへらへらと笑って席に着いた。
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