私立秀麗華美学園
「想像以上ね。なんでだろ。似合ってて格好良いのに、笑いがこみ上げてきて、どうしようかと思ったわ」

「あれだな、人柄だな。つーか執事っていうより、あれは完全にホストだろ」

「咲が骨抜きになってたのもわかるぐらいだったわ。あれじゃあ、ねえ」

「あのまんま歌舞伎町とかでナンバー1ホストに君臨してたとしても、何ら違和感はねえな」


俺とゆうかは口ぐちに感想を言い合った。かなり失礼なものが混じっていたことは否めないが、しかたない。

やがて食前の紅茶が運ばれてきた。
運んで来たのは見知らぬメイドで、雄吾の方に視線をやると、目が合った途端不満そうにつんと逸らされたので、また笑ってしまった。


「でも、よかった」


まるで映画の中の女優のような動作で紅茶を口に運び、受け皿にそっと置いて、ゆうかはしみじみと呟いた。


「何が?」

「あの2人。だって、彼氏があんな風になってるのよ? 普通なら、周りの視線も気にするし、不安になったりするじゃない。なのに咲があんなに楽しそうに笑っていられるのって、愛されている自信があるからでしょ?」


なるほど、と思って、ゆうかの視線の先を追った。

女の子に声をかけられている雄吾の隣で、咲がにこやかに紹介をしている。雄吾が照れて顔を背け、皿を持って離れていく。
咲がそれを笑いながら追いかけて、2人はカウンター内に消えて行った。


「愛されている自信、か」

「来年で、10年。そんな2人だって、あんな些細なことで仲違いしちゃうこともあるんだもの。難しいね」


難しいね、って、それはどういう意味を込めておっしゃっているんだろうか。

一瞬自嘲気味に、そう考えた。でも、ゆうかが今言ったように咲たちのことを考えれば、一緒にこうしていられるだけでも、十分だとも思った。俺って向上心ないのかも。

ため息をつくと、紅茶のカップ越しにゆうかは俺を見て、一瞬、小悪魔のように微笑んだ。
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