私立秀麗華美学園
「もう。昔は喜んで、聞いてくれてたのに」
ゆうかは口を尖らせると俺に背を向けた。
えー、ちょっとそれはきついです。別に拗ねてても可愛いけど、やっぱり笑顔の方がいい。
「いや、覚えてんのもあるって。ほら、あれとか。えーっと、あれって、サザンカだろ? あの白いやつ」
俺はゆうかの服のすそを引っ張りながら、植え込みの花を指して言った。
ゆうかは緩慢な動きでそちらを向くとぼそりと言った。
「違う」
「……あれ?」
「あれは、夏椿。サザンカの開花時期は、10月あたりからよ」
激沈。
そっくりじゃん。だって絶対どっちも椿科じゃん。俺がうなだれると、ゆうかはくすりと笑って機嫌を直してくれた。
「夏椿は、よく沙羅双樹と間違えられる花。ほら、平家物語の冒頭の。それで沙羅の木って別名がついたりしてて……」
花や植物の話をする時、ゆうかはとても生き生きとする。
瞳が清らかな光に溢れ、口元には常に笑みが湛えられる。俺は幼き日の回想をした。
ゆうかの植物博士ぶりは、俺が出会った時から健在していた。小さい頃はよく花嶺の温室に連れ出されたものだ。
年がら年中色とりどりの花が咲きこぼれていたその場所は、当時俺たちにとって一番の遊び場だった。
あとからそこは、花嶺ゆうか個人の所有地であったと聞いた。
俺は小さな口元が紡ぎだすうんちく話を聞くのが大好きだった。というか、好きなものの話をするゆうかが大好きだった。
確かに昔は喜んで聞いていたし、自分でもちょこっと勉強したりしもしていた。
花に囲まれた幼いゆうかは、まるで妖精のように見えた。幼き和人くんも、ゆうかちゃんのことが大好きだったのである。
そういえば、俺はいつからゆうかを呼び捨てにしていたのだろう。
「ちょっと、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる」
「じゃあ、夏椿の英語名は?」
「ス、スチュワーティア」
「よろしい」
ゆうかは満足げに笑うと、履いていたヒールのない靴を脱いで足を投げ出した。
ゆうかは口を尖らせると俺に背を向けた。
えー、ちょっとそれはきついです。別に拗ねてても可愛いけど、やっぱり笑顔の方がいい。
「いや、覚えてんのもあるって。ほら、あれとか。えーっと、あれって、サザンカだろ? あの白いやつ」
俺はゆうかの服のすそを引っ張りながら、植え込みの花を指して言った。
ゆうかは緩慢な動きでそちらを向くとぼそりと言った。
「違う」
「……あれ?」
「あれは、夏椿。サザンカの開花時期は、10月あたりからよ」
激沈。
そっくりじゃん。だって絶対どっちも椿科じゃん。俺がうなだれると、ゆうかはくすりと笑って機嫌を直してくれた。
「夏椿は、よく沙羅双樹と間違えられる花。ほら、平家物語の冒頭の。それで沙羅の木って別名がついたりしてて……」
花や植物の話をする時、ゆうかはとても生き生きとする。
瞳が清らかな光に溢れ、口元には常に笑みが湛えられる。俺は幼き日の回想をした。
ゆうかの植物博士ぶりは、俺が出会った時から健在していた。小さい頃はよく花嶺の温室に連れ出されたものだ。
年がら年中色とりどりの花が咲きこぼれていたその場所は、当時俺たちにとって一番の遊び場だった。
あとからそこは、花嶺ゆうか個人の所有地であったと聞いた。
俺は小さな口元が紡ぎだすうんちく話を聞くのが大好きだった。というか、好きなものの話をするゆうかが大好きだった。
確かに昔は喜んで聞いていたし、自分でもちょこっと勉強したりしもしていた。
花に囲まれた幼いゆうかは、まるで妖精のように見えた。幼き和人くんも、ゆうかちゃんのことが大好きだったのである。
そういえば、俺はいつからゆうかを呼び捨てにしていたのだろう。
「ちょっと、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる」
「じゃあ、夏椿の英語名は?」
「ス、スチュワーティア」
「よろしい」
ゆうかは満足げに笑うと、履いていたヒールのない靴を脱いで足を投げ出した。