私立秀麗華美学園
「そういえばさ、話は変わるけど」

「んー?」

「いつから俺って、ゆうかのこと、呼び……」

「うおおおおおーい!」


背後からおもむろにかけられた、しかもよくよく聞き慣れたその声に、俺とゆうかはすぐさま振り返った。


「……ついに、会っちまった」


落胆の色を帯びた俺の声を聞き、スーツ姿の男は不満気に声を張り上げた。


「お前、なんだその物言いはあ! せっかく来てやったんだぞ!」


大きな噴水の向こう、つまり結構遠く離れた場所から叫ぶようにぐだぐだぐだぐだ話をしているのは、兄ちゃんだった。

姉ちゃんと一緒に学園祭に来るということは聞いていたが、聞いていたので、できれば会いたくはなかった。理由はたくさんあるが、その中でも一番なのは。


「なあ! ゆうかちゃん! お久しぶり! いつ見ても可愛いね!」


……なぜだか俺の兄上、月城和哉は、ゆうかのことが大好きなのである。自分に婚約者がいるにも関わらず、だ。
そして俺以外には至極愛想のいいゆうかは、適当にあしらうわけでもなく、まともな応対をするのである。
見ていて気分の良いわけがない。


「お久しぶりですね。和哉さん、和音さん」

「ほんと久しぶりね。ゆうかちゃん、また綺麗になって。それにひきかえ和人は何のかわりばえもなく。まったく情けないわ」


噴水の向こうで手を振り上げて何かしらを叫んでいる兄ちゃんを放置して、姉ちゃん、月城和音は俺たちの傍へやってきた。

久しぶりだったが、少しも変わっていない。俺より背が高いのも相変わらずだ。ヒールのせいもあるかもしれないが。いや、絶対そうだよな、うん。

姉ちゃんは無遠慮に俺の頭をぐしゃぐしゃとかき乱した。
月城和音、21歳。性格:いじめっこ。ゆうかと気が合うわけである。
ちなみに彼氏は常に3人以上。魔性の女というのは、こういう人を言うのだと思う。

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