私立秀麗華美学園
「ゆうかちゃんの騎士には、お前より俺の方が相応しい!」

「和哉、あんまり言いすぎると那美さんに言いつけるわよ」

「それは困る!」

「那美さん、お元気ですか?」

「おー、あんまり会ってねえけどな。口やかましくて嫌になる。ということで、ゆうかちゃんに癒してもらおうと……」

「触んなっつーの!」


俺は立ち上がって、ゆうかと兄ちゃんの間に割って入った。身長差が我ながら情けないが、兄ちゃんをじろりと睨み上げる。
それを見た兄ちゃんと姉ちゃんは、ちょっと感心したような顔をした。


「何、あんた、ちょっと行動的になったじゃない」

「ほんとだな。昔はすぐに泣いてたくせに」

「泣いてたって……それは昔すぎるだろ」

「いや、そう昔でもないぞ。中学入ってすぐの頃……」

「あーもううるさい!」


俺の後ろでゆうかがくすくすと笑っているのがわかる。俺は口を引き結んで、なお兄ちゃんを睨んでいた。
姉ちゃんが髪をかきあげて腕組みをし、にやりと笑って言った。


「ちょっとは変わったのかしら、和人も」

「変わりましたよ」


振り向くと、ゆうかはとても優しく微笑んでいた。久しぶりに見る表情だった。


「和人だって、やる時はやるんだってことが、わかりました。小さい頃からよく泣いてもいたけれど、優しくて控え目で、自分の意見を主張することもあまりなかったのに――この間、薔薇園でですね……」

「わー! ストップストップ!」


俺は慌ててゆうかの口の前に両手を持っていった。な、何を言い出すかと思ったら。


「なになに? 薔薇園で?」

「どけ和人、ゆうかちゃん、続き……」

「もー! 帰れ帰れ帰れ! なんでもないから!」


必死で兄ちゃんと姉ちゃんの背中を押して、ゆうかから遠ざけた。2人は俺の必死さに、渋々という感じで足を進めた。
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