私立秀麗華美学園
ほお、それでも驚愕してんのか、と思いながら続きを待ったが、雄吾はそれきり口を閉ざした。


「……で?」

「それで終わりだ」

「説明とかないのかよ」

「だから、今言ったことが事実だ。心境が変化した。終わり。説明なんてできそうもないから、驚愕しているんだ」


驚愕しているんだ。って、あのな、驚愕ってのは、非常に驚くってことだぞ。新たなようで、いつもの雄吾だ。


だけど確かにそれは、驚くべき変化ではあった。
この9年間、別に咲の思いは一方的だったわけじゃない。雄吾は咲のことを、ただの許婚としてじゃなく、好きな女の子として……いや、正確に言うと、「恋人として扱ってきた」。
それでもその態度が義務感からだけのものではないように、俺には見えていたし、大事な人であることに変わりはなかったんだろう。

なまじ長かったからな、そんな関係が。当たり前みたいになっていたところに今回の事件。
これはあれか、世に言う、雨降って……降って……なんたらがなんたらというやつだ。


「まあ、そういうわけなんで、たまには一人で頑張れよ」

「ええええええ!?」

「ゆうかとの関係も順調みたいだし、いいだろ。依頼者はお前の友人ということもある。依頼内容も聞く気はないが、まあ、一人じゃ無理だろうから、ゆうかと2人で頑張るんだな」

「ひでえ……」


ひでえ。いろいろひでえ。こんなことなら、依頼を受理するのは雄吾に相談してからにすればよかった。
確かに依頼主が真二だからってこともあるが……。いくら友達のこととはいえ、自分が先頭に立って依頼を進めて行くことになろうとは、夢にも思わなかった。


「頑張れ月城和人。そう多くない友人の頼みだ。人望のためと思って動いてみれば、意外とどうにかなるかもしれないぞ」


俺の痛いところを突き刺しつつ、雄吾は花鳥風月の活動を放棄した。
こうなっては仕方がない。そう多くない友人の頼みだ。開き直ってやる。


「さきさき大好き雄吾朗! 今に見てろ!」

「さきさき……? ……咲……?」


勢い余っておかしなことを叫んでしまったが、気づかぬふりをして、俺はそのまま部屋を飛び出した。

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