私立秀麗華美学園
扉を閉めると同時に、無意識のうち深いため息がもれた。


「やだなあ……」


ぽつりと本音が飛び出す。ああやだやだめんどくさい。言ってしまえば終わりだが、体裁的に放棄するわけにもいかないし。

しかもなんだか、真二の様子も少し変だった。なんでお茶受けにようかんなんだ。しかも部屋に行っただけでお茶を出されたことなんて、今まで一度もなかった。
その上さっさと俺を退出させたがっていたあの態度。なんなんだ一体。



俺は部屋へ戻ると、黙ってベッドに倒れ込んだ。
雄吾は何も言ってこない。


「あーあ……」


顔を布団に突っ伏したままというなかなかに苦しい体勢で、ため息らしき声を漏らしてみた。
雄吾は、何も言ってこない。

カシャカシャとキーボード上を雄吾の指が跳ねまわる音だけが響いていて、それが無性に俺の被害妄想力をかきたてたので、だめもとで再びため息を発しようと試みる。


「あー……」

「うるさい」


ぱしりと乾いた、むちのような一言。


俺だって。
雄吾の心境の変化を暖かく受け止めようと決心したことを、もう忘れてしまったわけではない。

だけどだけどだけど! 

俺、正直心の中で半泣きなんですけど! 数少ない友人の信用を簡単に失おうとしてるんだからな! 自分が花鳥風月の中で一番無力だなんてこと、この俺が一番わかってんだよ!


思う存分自虐を無音で叫び終わったその時、俺の中で謎の炎が燃え上がった。めらめらめらめらとじんわり闘志が湧いてくる。


もう、こうなったら、やってやる。
雄吾なんか、咲なんか、ゆっ……ゆうかなんかっ、知らん!

どうなっても知らねえからな!
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