私立秀麗華美学園
――真二がね、何もわかってないの


これは、まさか。
聞きたかったことど真ん中なんじゃないだろうか。


「全然わかってくれないの」

「まあ、しょうがないよね。私の方もそうだし」


わ……。
わたしもって、それはつまり。

――和人がね、何もわかってないの

……ってことですよね。


「頑張ってるつもりなのになあ」

「だよねえ。やっぱりすぐには、報われないものなんだろうね」


ゆうかと馬渕は同時に、いかにも気落ちしたというようなため息をついた。

俺は、どくんどくんと派手な音を立てる心臓を押さえながら、2人に気づかれないよう、そろそろと後退して再び壁のでっぱりに隠れた。


「な、何のことだろう……」


思わず小声で呟く。

一体、何のことだろう。わかってない? ……あ、確かにわかってない。

今の言葉をふまえると、朝ゆうかの様子がおかしかったのは、機嫌が悪かったせいもあるのだろうか。
最近俺、何かやったっけなあ。時間は守ってるし、ハルジオンとヒメジオンも見分けられるし……。


考えれば考えるほど「わかってない」ものが何なのかは発見できそうもなかった。というか、できないからこそ、姫たちはあのように嘆いていらっしゃるのであろうが。

もはや俺は、真二とまったく同じ立場に立ってしまったわけだ。危機感の度合いにのみ、多少の相違はあるけれども。依頼とか言ってる場合じゃねーじゃん!

ちらりと壁越しに、2人が座った方を見る。見れば見るほど、そこに立ち込める空気の悪さを過度に想像してしまいそうだったので、やっぱり目を背ける。

気づいてみると、近くの席に座ったカップルにちらちら見られていた。
何やらひそひそと言葉を交わしている。ああなるほどね、不審者扱いってわけですね。ごもっともな判断ですね。


完全に行き場を失った俺はこそこそと移動して食堂を出て、同じ立場にいる、もう1人の頼りない、そして雑種の犬っぽい、騎士の部屋へと向かった。

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