私立秀麗華美学園
10分と経たないうちに舞い戻って来た俺を、真二はしぶしぶ部屋へ入れてくれた。


「み、未樹がそんなことを……!」


食堂でのことを話すと、この世の終わりといった様子で慌てふためき始めた真二だったが、それ以前に俺にはつっこむべきことがあった。


「わかってないって、どういうことなんだ!?」

「いやまあ、それも大問題なんだろうけどさ」


俺は真二の部屋の、備え付けのキッチンを指した。


「お前、料理なんかするやつだったっけ?」


部屋の反対側にあるソファーに座った状態で見ても、この部屋のキッチンは酷いありさまになっているようだった。

なんだかわからないが、とにかく調理器具のもち手かなんかが5、6本見えている。洗い物がたまり放題なのが一目瞭然だ。そして部屋に漂うこのにおい。いや、異臭。紛れもなくキッチンの方角から流れてきているようだった。


「いやあ、ほら、今の時代、男だって料理ぐらい……なあ?」

「で、無残な失敗をとげたと」


俺の一言に真二は、ほっといてくれと言わんばかりにうなだれた。


「ここまでばれたら教えるけどさあ、和人」


朝からの真二の奇行をよく考えてみたところ、なんとなくその原因に目星はついていた。


「未樹はどうやら……鳥居雄吾に、憧れてるみたいなんだ……!」

「んなことだろうと思ったよ」


俺は盛大にため息をついた。大体、雄吾って本名じゃねえよ。雄吾朗だよ。どっちでもいいけどさ。


「ほんとだって! だってこの間未樹、あいつと俺を見比べたあとに俺に冷たい視線浴びせながら、あからさまなため息ついたんだぞ!」

「ほう、なるほど」

「危機だろ危機! 俺は和人と違って、未樹に嫌われたりなんてしたら、生きていける自信がないんだよおおおお――」
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