私立秀麗華美学園
かくして、キューピッド(なんか他に言い方ねえかな、これ)と依頼人だったはずの俺たちは、共同戦線を結ぶこととなった。


「で、その『わかってないこと』、どうやって調べるよ」

「俺は、未樹をもっとよく観察する! いつもしてるけど。そんで、最終的には正直に聞いてみるよ。未樹は俺のこと好きだから、許してくれるはずだ!」


もうどうぞご勝手にと言いたくなるような決断をする真二とは対照的に俺は、どうしたものかとため息をついていた。

しかしまあ、後半部分の台詞はともかく、観察を深めるってのは手っ取り早くて有効な手段だろう。

一夜明けて、週始まりの月曜日。


「……何、喧嘩売ってんの? そんな、じろじろ見て」


豆乳ブレッドを手にしたゆうかは、俺の視線に気づくと、そんな物騒なことを言い放った。

昼休み、半ば無理やりゆうかを誘って、中庭のベンチで昼飯を食べていた。ゆうかも特に拒みはせず、購買で買ったパンの包みを開けていたので、俺はその一挙一動を見守っていたのだった。


「ままままさか」

「だよね、わたしと喧嘩したって和人、勝てないもんね」


さらりとそんなことをのたまって、ゆうかは白くてまんまるなその昼ごはんにかじりついた。白くて形のいいあごが咀嚼活動をゆっくり開始する。
俺は雄吾お手製の弁当を取り出した。


「だって、俺がゆうかのこと殴れるわけねえじゃん」

「まあ、殴られるより先に蹴り倒すけどね」


なんつーことを言い出すんだ花嶺家の令嬢は。


昨日とはうってかわって、今日はよく晴れていた。明け方まで降っていた雨で、ベンチに濃い影をおとす葉っぱたちは、濡れてつやつや光っている。その隙間から降り注ぐ木漏れ日も、日に日に強さを増しているようだ。


ゆうかのキック力の話なんかをしながらその後もちらちらとゆうかを見て、「観察」を続けてみたものの、特に変わった点は見当たらなかった。

いつも通りのうつくしい姿、身のこなし。とげとげした言葉。気のなさそうな返事。
顔色が悪いわけでもないし、目を合わせてくれるところを見るとそこまで機嫌が悪いわけでもないようだ。

一体、「何が」わかってないんだ――……?
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