私立秀麗華美学園


和人が雄吾との相部屋のドアを閉めると同時に、咲はより強く雄吾に腕を絡ませた。


「やったー、和人出てったー」

「……なんでわざわざ、本人に聞きに行かせたんだ? 予想外だったな」


雄吾はベッドに手をつき、咲に軽くもたれかかるような姿勢になって、尋ねる。


「えへへー。なんかなあ、和人があんまり下手に出てるもんやからさあー」

「ああ、なるほどな」


雄吾は即座に理解したように微笑み、首をひねって咲と目を合わせた。


「本人と向き合えよってことか」

「まあそんな感じかなー。だってあたしが教えちゃったら、ゆうかは、和人が悩んでることすら知らんままやし」

「咲も成長したな」


耳元で低い声に囁かれ、咲は思わず体の力が抜けた。タイミングを見計らったかのように雄吾はするりと咲の手を抜け、振り向いて咲の頭を撫でる。


「……もー、なんで抜けるんよ」

「恥ずかしいからだ」


生真面目な顔をして雄吾がそんなことを言うので、咲はおかしくなった。ついでに、照れ隠しのように結構な力を入れて頭を撫でてくる大きな手もおかしい。雄吾といると、いつも何もなくたって笑顔になってしまうのに。


「……なんで、笑ってる?」


彼は心底不思議そうに尋ねる。
他人同士のことなんかは即座にわかってしまうくせに、どうしてこんな簡単なことはわからないんだろう。


「咲?」


いったん笑うのをやめて、下を向く。そして、勢いをつけて、


「別にっ」


思いっきり、両手を広げて飛び込むようにして、咲が抱きついた。
不意を突かれ、雄吾の半身がベッドの外に落ちる。慌ててバランスをとり、咲を庇うように背中に手を回す。


今は恥ずかしくてもあたしが慣れさせてあげるもん


背中にてのひらの温度を感じながら、咲は満面の笑みで考えた。
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