私立秀麗華美学園


男子はハート寮へ、女子はスペード寮へは、原則的に立ち入り禁止となっている。
が、原則は原則にすぎないので、今やお互いの寮への出入りはほとんど自由同然だ。

ただし、両寮長間で定められたらしく「行き来は午後10時まで」という暗黙のルールは存在している。


そんなわけで、ゆうかに突撃となれば部屋に行くこともできたわけだが、あいにくそんな甲斐性は持ち合わせていなかったため、俺は内線を選んだ。
都合よく部屋にいたらしく、すぐに出てくれた。


『なんか用?』


これまたいつも通りのそっけなさ。

そして自分の無計画さに気がついた。どうやって切り出すかなんて考えているはずもない。
つーか、本当に聞いてしまうのか。本当に咲を信用して、聞いてしまっても大丈夫なんだろうか。なんでこれ受話器取った時点で思いつかなかったんだ俺ええええ!


「よ、用と言えば用のようでもあり、用だかなんだかわからないけど、な、なんかえーっと、と、とにかく! ……用は、あるようなないような……」

『……切るわよ?』

「ちょちょちょちょっとそれだけはちょっと待って!」


電話口を遠ざける気配がしたので慌てて引き止める。

なんだこれ。あーあなんだこれ。この状況で聞かない選択肢はねえよな、うん。ねえよな!
自分を追い込んでから、思い切って口を開いた。


「あの!」

『何よ?』

「……さ、最近のゆうかの行動についてお尋ねしたく存じておりまして……」

『わたしの行動?』

「少々奇っ怪な点があるような気がするもののこちらの勘違いでしたら非常に申し訳ないのですがやはり疑問の残る点が多少存在しそうろう……」


そうろうってなんだそうろうって。候? あれ、この丁寧語、古語じゃねえ?


『…………げほっ』

「あれ? ゆ、ゆうか……?」


むせたような音が聞こえた電話の向こうからは、続けて含み笑いをするような声が聞こえてきた。

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