私立秀麗華美学園
咲から電話がかかってきたのは、その日の夜のことだった。

部屋の電話が鳴って雄吾が出たと思ったら、「咲から、お前にだ」と言って受話器を渡されたので、不思議に思いつつもしもし、と応えたところ


『和人ー! あんたゆうかになんか変なこと言うたああ!?』


と、まくしたてられたのだった。


「言ってねーよ!」


たぶん……。


『嘘やん! 絶対なんかいらんこと言うたやろ! ゆうかの様子、おかしいねんけど!』

「おかしいって、ど、どんな風に?」

『結局さあ、ゆうかってダイエットしてたんやろ?』

「ああうん、そうでした」

『やっぱおかしい! ゆうかのダイエット、エスカレートしてんねんけど!』

「エスカレート……!?」


咲によるとゆうかは、夜ごはんに果物しか食べなかったらしい。本日の食堂の限定メニューがゆうかの好きな、白トリュフと蟹のクリームパスタだったにも関わらず、だ。
そして帰りには自販機でパックの豆乳を半ダースは買い、部屋に着くなりジャージとタオルを抱えて、こんな時間にジムへと向かったそうだ。

確かに、エスカレートしているようである。


「なんなんだよ……」

『あたしが聞きたいよー。ゆうかはなんも答えへんし。あーもう、和人はゆうかの機嫌悪する天才やな』


さらりと皮肉な言葉を残し、咲は電話をきった。


「俺、何かしたっけ……?」


脱力して受話器を置き、呟いてベッドに倒れ込む。

聞いたところでは、ゆうかは何か知らんが機嫌が悪い。というか怒っているようである。
原因が俺じゃなければ万々歳だが、今日の電話口の様子からしてそういうことにはならなさそうだ。


「女ってわかんねー!」

「……ゆうかって、だろ?」


大の字になった俺の背中に向かって、雄吾は苦笑気味に言った。
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