私立秀麗華美学園
そして恐れていたことはおこった。

翌朝、いつもの待ち合わせ場所に、「定刻」を15分過ぎてもゆうかは現れなかった。

予想できたことだったので、仕方なく一人で学校へ向かう。
あの気分屋め。小悪魔め。1日の最初に会う女がゆうかじゃない俺の気持ちがわかるか。ばかやろ。


教室に着くと、ゆうかは自分の席で姿勢を正して座っていた。

上からピアノ線かなんかで吊るされたかのように、この上なく真っ直ぐな背筋。
机2つ分離れた距離で、髪伸びたなーなんて思いながら眺め続けていると、ゆうかがちらりと視線を向けてきたので唐突に目が合った。


「おは……」

「おはようございます」


出た。
何百回と聞いた、冷ややかな声。他人行儀はゆうかの得意技だ。

いつものことだが、わからない。何がそんなに気に食わなくて、せっかくの美しい顔を、能面のような無表情で覆ってしまうのか。

珍しいことに、なんだかそんな様子に少し腹が立ったので、机1つ分近づいて尋ねた。


「今朝、なんで来なかったんだよ」

「朝の散歩をしていました。1時間。敷地内をぐるぐるぐるぐる」


無表情で言い放つと、もう話しかけるなとばかりにゆうかはそっぽを向いてしまった。

本当にエスカレートしなさっている。なんでだなんでだなんでだ。俺が何をしたっていうんだ。本当、なんか言ったっけ俺。ああもう思い出せねーわかんねーこれだから俺はまったく……


声も出さず悶絶していると教室のドアが開いた。
入って来たのはなんと、馬渕と真二だった。


「おお和人、おはよう!」


真二は俺を見つけると、満面の笑みで駆けよってきた。るせー、こっち来んな雑種。


「未樹に聞いたら答えてくれたよ。ダイエットしてたんだってな、花嶺さんと。そのせいで俺が寂しかったって言ったら、未樹も怒らなかったどころか謝ってくれたし。いやー、和人のおかげだよ!」


あっはっはと高らかに笑う巻き毛。それはそれは、ようございましたね。つーかそれなら最初からそうしてろよ。俺の存在自体無駄だったじゃねーか。


結局最後には俺だけがうまくいかない。

正確に言えば、俺たちだけが?



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