私立秀麗華美学園
その日、俺はショートが終わると、ゆうかに声をかけることも試みず、早足で寮までの道をたどった。

部屋に着くと、いつものようにベッドに身を投げ出す。ふかふかのマットレスは必要以上に衝撃を吸収する。雄吾はまだ帰っていない。

俺は足をばたばたさせてから、いつの間にか夏使用になっているかけ布団にもぐりこむ。なるべく頭の中を真っ白にして、考えたいことだけを考えられるように気持ちを集中させる。


数分後。


「…………だーっ! 暑い!」


思いっきり布団をめくり上げる。夏先に布団に潜り込む馬鹿がどこにいるんだよ。ここにしかいねえよ。
あと思ったよりむしむししたので、窓の外を見てみると、久しぶりに空模様があまりよろしくなかった。梅雨は終わったんじゃなかったのかよ。どうも俺は気象庁と反りが合わないようである。


どう考えても思考回路おかしいよな、これ。
とりあえず落ち着こう。

そう思って、雄吾の勉強机の椅子に座ってみることにした。雄吾の座右の銘、明鏡止水の境地を目指す。

回転椅子の上であぐらをかいて、目を閉じ、今度こそ全神経を集中させた。


”和人って、花嶺さんのこと考えすぎだよな”


時々先刻の真二の言葉が蘇るので、それにだけは耳を傾ける。


そのまま、15分程度が過ぎた頃。


「……何を、している……?」


雄吾が部屋へ帰ってきて、俺を見つけるなり怪訝そうな声色で尋ねた。


「俺さ」


後ろ手にドアを閉め、雄吾は警戒したような表情を保っている。


「わかったのかも、しれない」


俺は椅子から離れ、きちんと元あった場所に戻して言った。
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