私立秀麗華美学園
「お久しぶりのご帰省、お変わりもなく安心致しました」

「みのるも相変わらず若いなー」


みのるは他の使用人が運んできた俺の荷物を部屋の中央まで運び入れたところのようだった。


「今回は、花嶺の御一家もご一緒だそうで」

「そうなんだよ。心労が積もって大変だ」

「若いうちの苦労は売ってでもやれ、と言いますし」


にへら、と柔らかい笑い方につっこむ言葉を失う。

言わない。絶対言わない。売れるなら売るよなそりゃ。

みのるは挙止動作やマナーは完璧で、言葉遣いも問題なく、よく気もつくので使用人としては申し分ないのだが、普通の人と比べると、学力の面ではやや劣り気味である。

詳しくは知らないが、みのるは高校卒業と同時に親父に雇われここで働き始めたらしい。
もちろん、今の慣用句が大学レベルだとは言わないが。

今のような軽い間違いは日常茶飯事だが、つっこもうとするとあの最柔級の笑顔に阻止される。あまりにものほほんと微笑むので、まあいっかみたいな気持ちになってしまうのである。ある意味最強の笑顔だ。


「そっか。買ってでもやっといた方がいいか。それもそうだなー」

「はい。ところでお荷物ですが、いかが致しましょう」


流された。


「あ、うん。自分でやるからいいよ……。置いといてくれ。ありがとう」

「承知致しました。では、ご夕食は6時半頃からだと伺っておりますので」


一礼して部屋を出ようとしたみのるを引き止め、荷ほどきをしながらもう少しだけ世間話をする。

それを終えるとみのると部屋を出て、ゆうかの部屋の方へ向かった。
< 220 / 603 >

この作品をシェア

pagetop