私立秀麗華美学園
ゆうかの部屋の扉も薄く開いていたので、軽くノックをしてから入る。
ゆうかは開けたトランクの前に座っていて、俺たちが入ってくるのに気づくと立ちあがった。


「稔さん! お久しぶりです」

「お久しぶりでございます。ゆうかお嬢様。ますますお綺麗になられまして」


恭しく一礼をしたみのるに、ゆうかは笑顔で話しかける。

別にこんなことで、妬いてるとかそういうわけじゃない。
ただ、身長差とか優雅な身振りとか大人っぽい雰囲気とかが、似合いすぎだよなあと再認識しただけだ。


「あ、和人。夕食までどうしよっか」


まるでたった今俺の存在に気づいたかのような呼びかけ方に気をとられ、返事に詰まっていると、みのるが助け舟を出してくれた。


「でしたら鳥部屋をご覧になってはいかがでしょう。宏典様がお取り寄せになり、一昨日入った新入りもおりますし」

「へえー、行きたいです。いいよね和人、行こっ」


ゆうかに笑顔で言われて断るという選択肢を持ったことのない俺なので、無論同意し、みのるのあとをついていった。


鳥部屋というのは……説明するまでもないだろうが、鳥の部屋だ。文字通りにも程がある。

ゆうかにとっての花が、親父の場合は鳥だったらしく、特に綺麗な色のインコが好きで、珍しい種類が売りに出されるやいなや、取り寄せを決定してしまう。

そんなわけで月城家には珍鳥専用の小屋が建てられ、しかし「小屋ってなんか、粗末っぽくないかぁ?」という親父の感性により、鳥部屋と呼ぶことを義務付けられたのである。


中庭の側へ出て、動物の形に刈り込まれた植栽や白くて頼りない造りの洋風東屋を通り過ぎ、歩いて行く。

手入れされ整えられた芝生の上を進むと、敷地のかなり奥まったところにその巨大な部屋はあった。

みのるが鍵を開け、3人とも急いで中へ入り素早く扉を閉める。
その途端、様々な声が一挙に押し寄せて来た。


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