私立秀麗華美学園
クロノリに餌をやって、鳥部屋を出てからは他にうちで飼っている動物を見たり、みのるにつっこんだり、ゆうかの希望でうちの植物園に入ったり、みのるにつっこんだりしているうちに夕飯の時間になった。


食事会の時には給仕も兼ねているみのるは急ぎ足で屋敷へ戻ったので、ゆうかと俺は2人でダイニングルームへ向かう。


「あ、そういえばね。やっぱりわたしの部屋のテーブルの上に、新しい浴衣、置かれてた」

「……俺はなかったけどな」


もちろん欲しかったなどというわけではない。淳三郎氏のささやかだが明らかな悪意の見え隠れに、ため息をつきたくなっただけだ。


「確実に嫌われてるな」

「そりゃああれでも父親だから。娘の相手なんて気に入る方が変わってるでしょ」

「それだけだといいけどなあ……」

「それだけよ」


ゆうかが微笑んで断言するので、少しとまどった。



庭園側の玄関から入って、ホールを抜けるとダイニングルームの扉が見える。

開けてもらって中へ入ると長ーいテーブルを前に全員が既に席についていた。
俺たちを除くと全員が成人しているので、食前酒を嗜んでいる。


「全員揃いましたね。それでは、お料理をお願いしますね」


母さんが給仕頭に声をかける。やがて、オードブルが運ばれてきた。サーモンとアボカドのマリネだ。昼は懐石料理だったそうなので、やはり夜はゆうかの好きなフランス料理らしい。


「しかし、早いものですなあ。和人とゆうかさんを対面させてから、もう、9年ですか」


親父が向かいの席に座っている淳三郎氏に向かって言った。
席順は、扉から向かって右列に親父、母さん、兄ちゃん、俺。反対側に淳三郎氏、りえさん、ゆうか、そしてお客人ということで那美さんだ。


「そうですな。早いものです。ところで本日、和音さんはどちらに?」


彼の、俺たちについての話題を切り替える速さは尋常ではない。


「和音はなんでも、大学のサークルの遠征とかで。せっかくのお食事会ですのにねえ」

「若いんですから、結構なことだと思いますよ。お元気なようで何よりです」


大人たちの世間話で食事会が始まるのは恒例のこと。
しかし、ここで気を抜いているわけにはいかないのだ。
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