私立秀麗華美学園
夕食を終えると俺たちは全員そろって大広間へ向かい、今度は先程よりも少数同士での他愛もない世間話に花を咲かせた。


部屋の中央にでんと据えられている、自然の湾曲を持ったままの一枚板が天板となったテーブルの上には、ワインやハーブティーやコーヒーなどの飲み物と、カナッペなどおつまみに近い軽食が並べられている。


今は、扉に近い革張りのソファーに花嶺一家が座っており、母さんと那美さんがテーブル近くで可動式スツールに腰かけている。

自然、俺がいるのは月城家の男子勢の中だった。


「おい和人、ゆうかちゃんとの話、本当か?」


窓際に備え付けの小テーブルの上で、兄ちゃんがワイングラスを揺らしながら尋ねる。グラスの中でうずをつくるボルドーの液体と共に、浴衣の袖口がひらひらと揺れていて邪魔そうだ。


「ゆうかさんが言ったんだ。本当なんだろうよ」

「うーん。解せない。ゆうかちゃんと和人が和解する日が来ようなどとは思わなかったぞ」


和解って別に、対立してたわけじゃねーよ。
一方的に相手にされていなかっただけであって。


「俺は」


ワインをちびちび口に運びながら『解せぬ』の表情をした兄ちゃんと、やはり朗らかに笑っている親父の視線を感じながら、言う。


「ゆうかが笑ってるなら、何でもいいよ……」

「……酔ったか? 和人」


兄ちゃんが気味の悪そうな視線を俺に浴びせてくるが、残念ながらアルコールは、一滴たりとも摂取していない。


「いつからそんなサムイ台詞を言うようになったんだおまえは」

「サムイとか兄ちゃんにだけは言われたくねえよ」

「2人とも、男だなあ。わたしが舞子と出会った見合いの席でなんかなあ、父さん、緊張して一言も喋れなくってなあ……」

「俺がいつサムイ台詞を言ったあああ!」

「もうなんかあれだよ、兄ちゃんの存在自体がサムイよ。っていうか牛ってなんだよ」

「牛は今関係ないだろう!」

「あ、そっか。ペットに牛と羊増えてるなと思ったら、あれは兄ちゃんのせいか」

「舞子は、それはそれは可愛くって……」


昔話をつらつらと語り出す背を丸めた酔っぱらいをよそに、俺と兄ちゃんは嫌味を言い合っていた。



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