私立秀麗華美学園
那美さんが兄ちゃんをべしべしと折檻している間に俺はゆうかに近づき、こっそりと話しかけた。


「な、ゆうか。さっきの親父たちの話……」

「ああ、そうそう、あたしも聞いてたわ。和人あの時叫びそうだったでしょ」

「うん、ありがとな。気づいていただけてラッキーでした」

「……たまたまよ」


ゆうかは素早く両親たちの居場所に視線を走らせた。4人とも離れた場所に座って夫婦同士で会話をしているし、那美さんと兄ちゃんはテーブル近くでカナッペを取り合っている。


「完全に言ってたわね。『クローン』って言葉」

「言ってた。最近になって明らかになってきたみたいだったな」

「遺伝子研究だとしか聞いていなかったから驚いたわ。
商品化を目指しているっていう話が、技術的に現実的なものなんだと仮定すれば……遺伝子操作から派生して、そんな単語が出てくることになるのもわからなくはない」

「操作したものを、手っ取り早く増やすってことか」

「言ってしまえば、そういうことかも」

「アメーバかなんかみたいだな」


恐ろしいことだ。

人工的な能力をもって他より抜きん出て、そんな人物たちが何人も。
そのアメーバ群で何を為そうとしているのかはわからないが、確実に気分の良いことではない。


「魂胆がわからん……寮に戻ったら、雄吾に報告して相談しないとな」

「……体面的に、雄吾や咲にも、ね」

「そ、そうそう」


俺が慌てて同意した時、少し怪しい足取りで那美さんが近づいてくるところだった。
部屋の奥の方を見ると兄ちゃんが俯いていじけている。


「ゆうかちゃーん。ちょっとお話しましょ」

「はい」


笑顔でゆうかが応じて、2人はテーブルの、兄ちゃんがいるところとは反対側の場所に陣取った。
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