私立秀麗華美学園
「忘れたなんて、真っ赤なウソ。ちゃんと持ってきてたのよ和人の分。
部屋に入った時に机の上にわたしの分は置いてあったんだけど、さっき、ベッドの下から何かはみ出してると思ったら、これが」

「なんだ、淳三郎さんらしいな」


むすっとした表情で、ゆうかが泊まる部屋のベッドの下に俺の分の浴衣を押しこんでいる淳三郎氏の姿が浮かんだ。悩んだ挙句に、箱の角をベッドからちょっとだけ出すことにしたんじゃないだろうか。


ゆうかが浴衣を手に取って広げた。俺の分も寝間着用らしく、ガーゼ生地で筒袖のものだった。


「ん? ……なんか、短くない?」


確かに丈が短かそうだった。前に浴衣を頂いたのは、確か、中学2年の誕生日だ。まさかその時のままの仕立てなのだろうか。どんだけ成長してないと思われてんだよ俺。

促されるまま後を向いて両手を広げた。ゆうかが浴衣を俺の背中に合わせる。


「やっぱり。……っていうか」


ゆうかは浴衣を持ったまま首を傾げて顔を覗き込んできた。


「背伸び、してる?」

「いやいやいやいや」


こんな状況で僅かなサバ読みするほどの見栄っ張りではないつもりだ。


「そっか」


ゆうかは浴衣を畳んで箱に戻し、俺の前に立って視線を上げた。


「背、伸びたんだ」


ゆうかに続いてベッドに腰かける。
思ったより近距離に座ってしまった気がしたが、ゆうかは気にしているようではなかった。


「中学の時は目線の高さ同じだったのに。最近、見上げてるような気はしてたんだよねー」

「本当に? 春からもまたちょっとだけ伸びたかな。俺がちびに見えるのは、基本的に雄吾のせいだと思うんだよなあ」

「何cmぐらい?」

「70……1か、2はあるはず。保健室でさぼった時測ったから」

「うそー、170cmあるのー!?」


ゆうかが心底驚いたような表情をしたので、思わず笑ってしまった。
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