私立秀麗華美学園
「咲のこと見てるせいかな。咲が雄吾に持ってる感情が、好きとか愛とかそういうものだってことはわかるんだけど。
誰かが好きっていう感情自体はわかんなくて。
わかんないっていうか、わたしは知らないのかもしれない」

「笠井は?」

「ああ……それも含めて、よくわかんない、なの」


憂えたため息をつくゆうかの中で、今、いろいろな感情が渦巻いている。

その渦を捉えたいと思ったのはどうしてなんだろう。


「でももし和人が言うのが正しいんなら、わたし、笠井と一緒にいたいとかそいういことはあんまり思わないな。
かっこいいとは思うよ。人間的にもすごいと思う。これはちょっと皮肉も含めてるけど。
あと、あの日の罪悪感。でもなんか、それだけだったかも」


片思いの身としては、「そうだよ、ゆうかは笠井のことなんか好きじゃないんだよ」と無理やりにでも説き伏せるべき場面だったかもしれない。

でもなんか、そうしたくはなかった。強敵の退陣を願っているのはもちろんなのだが、ゆうかに自分で決めてもらいたかった。


「じゃあゆうかは、初恋もまだだってことか」

「かもねー……なんか悔しいんだけど」

「逆に聞いていい?」

「なーに?」

「ゆうかが俺のこと嫌いな理由は?」


その質問をした途端、ゆうかはぴたりと動きを止めた。


「…………え?」

「いや、答えたくないなら別にいいけど……」

「いや、え、和人、わたしが和人のこと嫌いだと思ってたわけ?」

「お、お、思ってますけ、ど……?」

「えええーっ!」

「ええー!?」


2人して大声を上げてお互いの反応に驚く。


「別に嫌いじゃないわよー!」


し、信じられない、とゆうかが困惑している。俺はまさかの答えに呆気にとられて、落ちたタオルを拾うことも忘れていた。


死ぬほど嫌いだとか、見ただけで吐き気がするとか、そういうレベルでないことには最近やっと確信を持てたところだってぐらいだった。

でも扱い方とか態度とか優先順位とかそういうところを見てると、俺という存在はゆうかにとって負の感情しか持てないものなのだと思っていた。
< 241 / 603 >

この作品をシェア

pagetop