私立秀麗華美学園
「ねえ、ゆうかちゃん」

「な、なんでしょう、か……?」


相手がよく知った女性とはいえ、あまりに間近で見つめられ、ゆうかは上ずった声を出した。


「そーんなこと言って、だけどゆうかちゃんだって、幸せでしょう?」

「幸せ……?」


生まれ持った環境のことを言っているのではないことはわかっていた。自分の相手との関係のことについて問われているのだ。

ちらりと見やると、その彼は自分の両親と話をしているようだった。食事会の席でのやり取りを思い出す。


「進展のことでしょうか?」

「もちろん、そういうことも含めて。そうそう、今日の2人の話とかね、わたしはとっても嬉しかったのよ。

たぶんゆうかちゃんって、あんまり自分の気持ち、言ってないでしょう?

ただ見てて思っただけよ。

和人くんってまだまだゆうかちゃんのこと、わかってないと思うなあ」


アルコールのせいか那美の喋ることはとりとめがなく、ゆうかは返事の仕方を迷った。


「あの……でもわたし、別にいきなり和人のことが好きになったとか、そういうわけではないですよ?」

「じゃあ、2拓」

「…………?」

「2拓、で、答えを出すとしたら?」


とろんとした目をして、那美はVサインをゆうかにつきつけてくる。


「それは」

「それは?」

「……それは、誘導尋問です」


拗ねたような表情をしたゆうかを見て那美は嬉しそうに頭を撫でる。


「本当に、すごい進展なんじゃない? 和人くん、頑張ったんだろうねー」

「正直に言うと、わたしもちょっと頑張りました」

「あら」


那美は手を伸ばし、テーブルの奥にあるピッチャーからグラスに水を注いだ。
< 262 / 603 >

この作品をシェア

pagetop