私立秀麗華美学園
恭真と麻由に引っ張られ2人が部屋へあがっていくと、リビングには人が大勢いた。


「雄吾朗、お帰りなさい」

「咲ー! 父さんたちもお邪魔させてもろうてるぞー!」

「あらぁ、雄吾朗くん、また背伸びたん違う?」

「雄吾朗くんの姫さんだって? 可愛らしいねぇ!」


2人の両親兄弟のみならず、鳥居家の親戚勢も集まっているようだった。

咲を初めて見る叔父やらその奥さんやらに取り囲まれ、雄吾のもとから引き離される。


「ただいま……聞いていないが」

「風來さんはね、内緒でお越しだって言うから。遼人さんは新婚旅行帰りで突然来たのよ。実果ちゃんは近くに寄ったから子供を見せに、それからね……」


雄吾が母親に聞くと、結構お喋りな性質なのか、ぺらぺらと来客たちを迎えた理由をひとつずつ説明し始める。

しまった、という表情をした雄吾に救いの手を差し伸べたのは彼の父親だった。


「美子、その辺にしておかないか。お帰り雄吾朗。荷物を預けて、旅の疲れを癒してくれと言いたいところだが……その前に、咲さんを助けた方がいい頃かな?」


文句なしに整った顔をした最愛の夫にたしなめられて美子は口を噤んだ。

鳥居家現当主、鳥居雄治朗。武道を極め、そこで培った礼儀作法は日本男児の目指すべきところに過不足なく到達していると言えるが、いわゆる堅物というわけでもないらしい。

和魂は重んじているものの基本精神はレディーファースト。

そんなところに惚れ込んで、共に家を背負っていく、楽ではない運命を選んだのが雄吾の母親、美子だ。

雄治朗に言われて一度は黙ったものの、口をもごもごさせているところを見ると相当お喋りが好きなようである。

息子の無口さは一見不思議に思われるが、幼少期からこの母親のもと育った反動と見れば……納得できないわけでもない。


使用人に2人分の荷物を預け、父親に指摘された通り雄吾は咲の救出に向かった。

救出というのは、主に美子方の親戚による質問攻めから、だった。
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