私立秀麗華美学園
「咲ちゃんは雄吾朗くんのどこが好きなの?」

「お互い好き合ってるなんてねえ。こんな幸せな政略結婚てのもなかなかないわね」

「ねえちゃん! 雄吾くんと何かあったやろ!」

「雄吾朗くん笑ろてはったもん!」

「本当? 咲ちゃん、詳しく教えてよ」


それ以上にあけすけな質問や好奇心に満ちた視線を投げかける鳥居家の人間をかきわけ、雄吾は咲を引っ張ろうとするのだが、咲の方ではそうでもなかった。


「雄吾のどこが好きて聞かれても、全部好きやから答えられませんよー」

「まあ、すごいわね!」

「確かに前より笑うようにもなってくれたし」

「やっぱりー! ねえちゃんすげーな!」

「何かあったかて言われると、学園祭近くの時ぐらいやけど……」


確かに2人の転機ではあったが同時にあまり思い出したくない思い出もちらほらあるその時期を事こまかに説明されそうになり、雄吾はなりふり構わず人垣から咲を引っ張った。


「さ、咲」

「んー? どうしたん?」

「あのな、あんまりそういう話を、人前では……」

「はーい」


ごにょごにょと言い淀む雄吾に咲は素直な返事をする。わかってやっていたのだから、言葉で口止めされたらやめてあげるのが優しさだ。


「ええーっ、雄吾朗くん、照れ屋なんだから!」

「咲ちゃん、いつか教えてくれよ」

「いつか、雄吾が忘れた頃にお話しますねーっ!」


忘れるものか、と呟く雄吾の横顔に、僅かに差した赤みを見て咲は笑顔になる。
腕を絡ませからかうように舌を出す。


そんな2人の姿に、両親たちは少なからず驚きの表情を見せていた。
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