私立秀麗華美学園
咲を中心に1学期に学園であったことなどを話しつつ、雄吾も局所局所で口を挟んでいる。

咲の喋りは、言葉足らずな部分や脈絡なく話がとぶことがままあるのだが、誰にでもわかりやすい言葉でストレートな表現をするので、聞き手にとっては楽な気持ちでくつろいで聞くことができる。

足りない言葉を横から補ってくれる相手がいるおかげもあるのだろう。


学園生活の楽しげな軽い話題を一通り話し終えると、今度は大人たちがやや真剣じみた顔つきになり、話や質問を始めた。


こういうこととなると、恭真や麻由たちの年代の子供たちはテーブルから離れて散り散りになり、それぞれ楽しく遊び始めた。

恭真は同年代の子たちとテレビゲームを取り出しているし、麻由はもう少し下の年の女の子たちと髪をいじりまくって遊んでおり、もっと幼い子たちが集まった場所ではおままごとなども繰り広げられている。



そんな中、部屋の隅の方に、ひとりでピアノの椅子に座って足をぶらぶらさせた、10歳前後の女の子の姿があった。

黒く長い髪。部屋中で転げまわっている同年代の子供たちを眺める瞳はどこかエキゾチックで、冷たい色をしている。

口は小さく引き結ばれており、その表情にはこれぐらいの年齢の子供に見られるはずの柔かさがなかった。


ぶらつかせていた足を、一瞬止める。視線を上げて、大人とそれに近い年齢の子供が座ったソファーの方を見る。
誰かの言葉に大人たちがどっとわいたのを見て、ため息のようなものをついた。

ちらりと時計を見て、今度は顔をしかめる。
全然進まない長針と短針に文句を言いたげな表情だ。


彼女は長い足を引き寄せて抱きかかえ、そこに顔をうずめた。


「そう! そんな感じで、月城と花嶺さんちは、びっくりするぐらいの珍しい順調ぶりなんですよー。なあ?」

「ああそうだな。文字通り、近年稀に見る順調ぶりのようで」

「やからあの両家については、全然心配するようなことは、な、い……」


途切れ途切れの語尾と共に、咲は視界に入った、部屋の隅で丸まった黒い女の子の方に顔を向けた。
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