私立秀麗華美学園
その日の夕方には、笠井と俺が組むことになってから初めてゆうかと2人で喋った。


「どういう風の吹きまわしよ?」


夕飯時の食堂。
トレーをテーブルに置きながら、ゆうかは尋問するみたいな口調で尋ねる。


「あー、えーっと、笠井がどーしても、俺と組みたいってゆーから」

「はあ?」

「冗談です」


箸と茶碗を両手に、ゆうかはますます俺を睨む。


「別にいいじゃん。成り行きだよ成り行き」

「ふーん。何か変なことでも企んでるのかと思った。あまりに珍しいから」

「珍しいっていうか、実際、ありえねーよな……」


何が悲しくて、恋敵とペア組まなきゃなんねーんだか。


「和人と英語の授業でペア組んだって笠井に何のメリットもないのに」

「……まあ、それはそうだな」

「否定できるようになってよね」

「それは置いといてさあ。ゆうかだって、ヨハンと組んでもメリットないだろ」

「あれは」


不意を突かれたように、ゆうかは拗ねた表情をして視線を斜め下に流した。


「向こうが言ってくるし、先生にあんなこと言われたら……っていうか、和人が」

「俺が、とやかく言う話じゃねーよな。はいはい。すいませんでーしたー」


言われるであろう言葉の続きをむすくれながら言うと、なぜかゆうかは余計に不機嫌そうな表情になった。


「あれ? 違った?」

「……もういい。なんでもない。全然なんでもない。メリットならあるわよ。ヨハンは優しーし、丁寧だし、和人より英語できるわよーだ」

「……それは、ようございましたね……」


またそういうこと言う。攻撃されたのは俺のはずなのに、ゆうかはむっつりした表情で押し黙った。

毎度のことながら、なんなんだ。女心は理解不能だ。


とにかくそれ以来、ヨハンが俺の中で最要注意人物になったことは確かだった。



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