私立秀麗華美学園
「馬鹿ですよ。えーえ馬鹿ですよ」

「よしわかった馬鹿、あれを見ろ」


かちんと来るも思わず素直に指された方を向くと、笠井が指していたのはやはりゆうかたちだった。

ヨハンが至近距離でゆうかの顔を覗き込み何か喋っている。


「何が起こってああなった」

「諸悪の根源はヨハンだろ。こっちがこうなってんのも含めて」

「何がしたいんだあの金髪野郎は」

「俺が聞きてーよ」

「じゃあ聞いてこい」

「なんでだよ。自分で聞けよ」

「立場的にお前だろ」

「成績的にお前だろ」

「……どう考えても今成績は関係ねえだろ」

「そうだな」

「馬鹿か。いや、馬鹿だったな。
それはそれとしてどうする。決めなきゃいけねんだろあれ」

「なんでもいいってかどーでもいいよ。こういうのは頭いい方のやつが決めるんだよ」

「じゃあ『お花見』で」


本当に決めやがった。しかもこの即答具合、絶対地味に考えてただろ。そんでどーせ俺が何か意見言っても却下するつもりだっただろ。意外とわかりやすいなこいつ。

そう思いながら目の前の相手をちょっと眺めていると、思わずため息が出た。


「あー、ほんとになんなんだこの状況は」

「とりあえずヨハンをゆうかに近づけたくねえって意識だけ共通してんだよな」

「俺はお前も近づけたくないけどな」

「それはこの際置いとけよ。問題はあの女たらしがなんでわざわざゆうかを指名したかってことだ。大体今までそんなに絡んでたか?」

「絡んでない。ゆうかも特に興味なさそうだった」

「つーことは単なるヨハンの好みか。……納得しかできねえけど」


しみじみとうなずくと「共感してる場合か」と突っ込まれる。


「とにかく授業以外で接触させないようにしたいな」


具体的なことをぶつぶつ呟く笠井を俺は少し不思議な気持ちで眺める。

今後の方針とでもいうのだろうか。まずそこから入るというのは自分にはなかった発想だと思った。


「なんかこう、アクティブだな」

「……策士と言え。間が抜ける」


言い返しもせずに、俺は腕組みをして座り直した。







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