私立秀麗華美学園
ふと、カルラの横でなぜか立ちすくんでいる笠井が目に入り、自分たちの使命を思いだした。へらへら友達増やしてる場合じゃなかった。
俺がトレーを置いて咲の隣に座っても、奴はその席に落ち着こうとしない。
「何してんだよ。座るなら座れよ」
「いや……」
「和人もツレおったん……って、笠井弟ぉぉ!?」
「しーっ!」
思わずゆうかたちの方を見る。尾行に気づかれたら一巻の終わりだ。
「悪いけど、あんまり大きい声は」
「はあ? え、何? カウンター? ……ああ、ゆうかのストーカーか」
「ストーカー言うな。いろいろわけありなんだ」
「なんやそれで一緒におんの? っていうか、いろいろ腹立ってくんねんけど」
じとっと睨みつけてくる咲に、笠井はどうも、と苦笑いを返す。
ああ、笠井雅樹の件か。咲にとっては、雄吾との破局に繋がりかねなかった大事件だからなあ。
「……まあ、弟本人は関係ないけど」
咲が不機嫌そうに目をそらすと、笠井は一つ咳払いをした。
「風來さん、その件については兄貴に代わって謝ろうと思う。
いくら君が魅力的だからといって、兄貴のやり方は人道的じゃなかった。弟として恥ずかしいよ。
だけど君たちの仲を裂こうなんて芸当はさすがの兄貴にも不可能だったようだね。
これを機に本当の愛というものについて理解を深めてくれればと切実に願うよ」
忘れていた。だがまさにこれが、笠井進という人間の外面だった。
鳥肌立てた俺には目もくれず、本当に申し訳なさそうな表情を全面に押し出して咲を見つめ続ける。
やがて、俺の方を向いた咲が首を傾げて、
「……いい人?」
「えーっと、基本的に、女には」
真っ向から否定したいところだがここはしょうがない。
咲の単純さにほっとして、笠井はヨクワカラナイという表情をしたカルラの隣に腰を下ろした。
「猫かぶり」
「世渡り上手と言ってもらおうか」
しらっと言って割りばしを割る。綺麗に真っ二つ。……慣れてんなこいつ。
そして俺たちはやっと落ち着いてゆうかとヨハンの様子を観察できた。