私立秀麗華美学園
窓に向いたカウンターなので基本的には背中しか見えない。だが身振りや時折見える横顔からして、残念ながら会話はなかなか弾んでいるようだ。


「何話してんだろ」


ずるりとうどんをすすって呟く。


「英語Wの授業の話だけってわけにゃいかねえよな」

「だよな。あ、笑った」

「今度は髪に触った。地毛かどうか聞いてんなあの感じ」

「しかも今ちょっと頭撫でた」

「変態」

「変態」


邪魔をしに入る甲斐性があるわけでもなく、睨みつけながらこそこそ2人で実況中継をしていると、咲がささやき声で言った。


「もしかしてあの横にいるのって、ヨハンとかいう人?」

「そうそう。ヨハン・パルミーノ。現在絶賛敵対視中」

「そういえば君もスペインからって。ヨハンとは知り合いなのかな?」


俺と話す時とは明らかに違ったトーンで笠井がカルラに尋ねる。


「え? ああ……彼、ね、知り合いよ。知り合い。同じ学校。スペインの」

「へえ。同じ学校からの留学生だったのか」

「そう。B組には女の子。彼女国籍違うわ。フランスの人」

「ああ、EU加盟国だから、簡単に隣の国の学校に通えるんだね」

「そうよ。わたしたちの学校、ぴったりスペイン端の方。ちょっと歩いたら、フランスよ」

「そうなんやー。日本じゃそういうわけにはいかへんもんなあ」


カルラの学校のことを中心に話は弾んで、俺たち珍妙な4人組は結局予鈴まで食堂にいた。


会話の間中笠井は忙しく首を振りながら、俺たちとあの2人の間で視線を行き来させていたが、俺は途中で眺めるのも嫌になってきて、意識してカルラや咲の方ばかりを向いていた。

ため息じゃ足りない。文句ぐらい言いたいけど、何を理由にすればいいのかわからない。
行動に出る勇気なんてもってのほか。

根性はないわ甲斐性はないわでどうなっとるんだ俺は。


ゆうかとヨハンもぎりぎりまで食堂にいたのだが、2人より先にに教室に戻っとこうというわけで、咲とカルラに手を振った俺たちは忍び足で食堂を出て行った。









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