私立秀麗華美学園
昼休み、なぜか俺は笠井と連れ立って食堂へ行き、昼飯を食べてから、並んで薔薇園の方へ向かって歩いていた。

なんとも言えない鳥肌のたつ親密感。顔も見たくなかったはずの相手と石畳の上を早足で歩きながら喋くり散らしてる奇妙な状況。
なんなんだ、これ。


「なんだ、お前師匠と知り合いだったのかよ」

「師匠って……呼んでて恥ずかしくないのかそれ」

「尊敬してるからいいんだよ別に」


つっこみを入れるのもためらわれるほど堂々と言い切られる。


笠井が薔薇園へ行くと言ったのは、零さんに会うためだったようだ。

水曜の昼休みは必ず薔薇園にいると知っているらしい。どんだけ通い詰めてんだよ。


植物園の中でも奥まったところにあるそのアーチをくぐって零さんの姿を探すと、藤棚ならぬ薔薇棚(棘無し品種)のベンチに彼は座っていた。
農芸関係の本を読んでいるらしい。

俺たちが近づいて行くと、気づいたらしく手を振ってきた。


「おおー! また来たか実は素直な猫かぶりの進! ってお前なんでライバルと一緒にいるんだよ!」


疑問形で言葉を発しておきながら一人でがっはっはと笑い出す。まあよくわからないが心の広さの弊害だろうみたいな感じで放置。


「こんにちは」

「どーも」

「おお、座れ座れ。やっぱりこいつだったんだな。善良そうなやつ」

「はい。この間言った通り休戦中なんですけど、こいつがあまりにもしみったれているので連れて来ました」


善良そうなやつ、らへんのくだりを俺は知らないことになっているのでさりげなくうつむく。


「師匠ー、説教してやってくださいこのへたれを」

「最近気づいたけどお前だって割と同類だろ」

「立場が違うだろ立場が」


さらりと言った言葉に含まれている意味を深く考えるより先に、笠井は零さんに近況報告をし始め、楽しそうに聞く零さんは大袈裟に相槌を打つ。


「ほーう。じゃあ結局のところ、妨害の方にも、奴らの関係の方にも、大きな進展はないんだな。
にも関わらず、どんより続きの和人に進が業を煮やしていると」


へらへらした態度とは対照的に、零さんのまとめ方は的確だった。

< 307 / 603 >

この作品をシェア

pagetop