私立秀麗華美学園
「そーなんですよー。まあこいつが根暗なのはいつものことなんですけど」

「はーん。しみったれ和人、何かあったのか?」


何か、って、それがわからないでいるから、俺は。
確かに状況が悪化しているわけではないし、ゆうかとも普段通りでいられているはずなのに、なんかこう、もやもや、というか。

自分が何を望んでいて、何を望んでいないのか。掴みたいものがあるような気がして、だけど何を掴みたいんだろう。


そんな曖昧な渦巻きしか存在してはいないのに何を説明しろっていうんだよ。


と、言おうと思ったその時。この場が、要は悩み相談所であり、俺を連れて来たのは笠井であるということを思い出す。


「……自分でも、わからない」

「否定はしないんだな。しみったれてることに。単なる嫉妬ではないのか?」

「あー、嫉妬って、よくわかんないんですよね。妬く権利ないと思ってるし」

「ネガティブキングだなお前は」

「……なんだよそのキャッチコピー」

「ネガティブキング! いいなそれ!」


どわはははと零さんが笑い出す。そんなうけるとこじゃねーだろ。


「師匠、落ち着きましょう」

「うははは……そうだな、いやー、しかし、あれだ和人。嫉妬する権利とか、そんな自分に不都合な概念は全部捨てちまえよ」


不都合な概念。その言葉に、胸のうちをつつかれた気がした。


「なるほど。確かにそれは一解決案ですね師匠」

「にしても、ライバルに世話焼かれてちゃ世話ねーな和人」


確かに、と思ったが張り続けてきた意地が邪魔をする。
笠井の方も何も言わず、一瞬で微妙な人間関係を見抜いたのかもしれない師匠を不思議に眺めた。


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