私立秀麗華美学園
「見てるといらいらするから、連れて来ただけですよ」

「ふうん。まあ、共通の敵ってのはなんかいいよな」

「いいよなとか言ってる場合じゃないんですけどね……」

「なんだよ和人、やっぱりヨハンとかいう奴のことも気にはしてんのかよ」

「ゆうかとどうこうって話じゃなくて、ヨハンが何を思ってゆうかを贔屓してるのかが気になって」

「確かにな。特別扱いにしか見えないんですよ」

「わからんことがある時には!」


零さんが突然大声を出し、俺たちはぎくりと肩を震わせる。


「聞けば、いい!」

「……ヨハンに、ですか……?」

「そうだ。いくら頑張ったって人の頭の中なんて見えねーんだよ。知りたいなら、聞け!」

「それもそうですね。さすがは、師匠……!」


本気で尊敬の意を込める笠井につっこみを入れたくなったが、はたと止まって考えたら、確かにそれは正論であるような気がしてきた。


「ヨハンに、直接」

「そーだ。よし決定。お前ら、自分と惚れた女の間に立ち塞がる共通の敵に、突撃してこい!」


びっくりするほど素直に笠井がうなずき、今度は俺の方を見る。


「……わかったよ。突撃しますよ」

「よし、当たって砕けろ! 骨は俺が拾ってやる!」


告白するんでもあるまいし。だけどテンションの上がった零さんには何を言って無駄なので、てきとうに相槌を打っておく。


「行って来い弟たち!」


よくわからんがとにかく一生懸命に応援されたので、素直に手を振って、俺たちは薔薇園を出た。


「なんか成り行きで大変な任務を課されたような」

「師匠が言うんだからやっとくべきなんだよ。疑う余地なしだ」


信者かよ、という言葉の代わりに笑いが漏れた。


「授業始まるしヨハンのことは放課後だな。次、体育だ。急がねーと」

「まあ白咲いねえらしいし、遅刻ぐらい大丈夫だろ」

「くそ真面目な委員長がそんなこと言っ…………え?」

「なんだよ」

「白咲が、なんて?」

「いねーって。おとといぎっくり腰になって、療養中らしいな」

「な…………」


俺は自分のタイミングの悪さを、呪った。





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