私立秀麗華美学園
”白咲に呼び出されてるから”

それは昨日、たぶん俺がゆうかに初めて、自分の都合のためについた嘘だった。

……って時に限って、ぎっくり腰って何なんだよ。どんなタイミングだよ。

フリーズした俺を訝しげに見ていた笠井に情報源を聞くと、違うクラスの男子からの情報だということ。
HRで知らされたとかではないようなので、ゆうかが知っているかどうかは、つまり俺の嘘に気づいたのかどうかは、今のところ不明である。


ネガティブキングも顔負け(?)なテンションで午後の授業を終え、HRのあと、笠井と目が合い、無言で合図された。

そこで初めて気がつく。そうだ、また、先に帰っててって言わないと。

「笠井と話すことがあるから」。嘘ではないよな、うん、これでいこう、と思って席を立とうとした時。


「和人、帰ってて。授業のことでヨハンと、相談することになったから」

「え、あ、うん。了解……」


同じようなことを先にゆうかに言われた。
ゆうかはそのまま、ヨハンの席へ向かった。俺がたまたま通り道にいただけだったみたいに。

何にせよ、助かったな、という気持ちだった。昨日の今日でまた、装うのは嫌だ。
ほっとしていると笠井がやってきて、当然のように俺の頭をつかみぐるりとひねった。


「……ぃってえな!」

「馬鹿か。阿呆か。間抜けか。今が一番安心してる場合じゃねえよ」


向かされたのは一緒に教室を出て行こうとするゆうかとヨハンの方。


「放課後。2人。たぶん図書館。ポニーテール。しかも一緒にいられたら、ヨハンに突撃もできねえぞ」


必要ない単語入ったよな、とつっこもうとしたが、教室から出て行く瞬間に揺れた茶色い髪のまとまりを見たら、やっぱり必要かもしれないな、と思い直す。


「じゃあとりあえずついていくか?」

「……恒例になりそうで怖いけどな」

「もうなんでもいいよ」


俺たちは少し遅れて教室を出て、忍び足で2人を追った。


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