私立秀麗華美学園
「松本さん」


準備万端に資料を抱え登校した俺は、着くなり彼女に声をかけた。


「計算、してきたよ」

「えっ、早いね。じゃあもうメニュー決めできちゃう?」

「うん。仮だけど」

「そっか。他のパートの会計の子はね、調理の残りの範囲で決めてくれるって」


衣装については、やっぱり花嶺家を中心に提供されるとのことだ。


結局費用は、ほとんど調理が使い放題。広がる自由と増える責任。

以前ならげんなりしていたところだが、やってやろうという気になっていた。

どうしたんだ俺、と不気味に思わんでもないが、たぶんこのまま突っ走った方が楽だ。ぐだぐだ考える方が疲れてしまう。

学園祭のことを考えている間は、ゆうかとのことを悩まなくていい、と思ったことも確かである。



ちゃんとしたメニュー決めをするのは昼休みにした。

弁当を持ってうしろの松本さんの席に置くと、隣にもうひとつ弁当が置かれた。

「よう」


俺に向かって小さく呟いたのは笠井だった。

突然現れた委員長に気づいた松本さんは嬉しそうな声をあげる。


「えーっ、笠井くん、どうして?」

「メニュー決めは一番大切だからね。背負う責任を分けてもらおうと思って。
ご一緒してもいいかな?」

「いいよいいよー、ラッキー」


ぽかーんと口を開けた俺の方へは1mmも興味を向けず松本さんに笑いかけると、笠井はお茶を買いに行った。


「……松本さん、笠井ファンなんだ」

「ファン? ファンかなあ。だって笠井くん、人気者だもん。かっこいいしなんでもできるしさ」


確かに成績はいいしスポーツはできるし部長で委員長だし。性格悪いけど。
女の子への対応の丁寧さも見れば、人気になるもの当然なんだよな。性格悪いけど。

ラッキー、か。
大抵の女子はそう思うのかもな、この状況。
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