私立秀麗華美学園
笠井が戻って来たので、資料を机に広げた。


「コストかかりそうな順がこれ。必要な材料がかぶってるのはこれ。
メニューの数は5個ぐらいでいいよな?」

「いいと思うよ。最低でも4個は欲しいね。月城くんがやる気を出してくれて助かるよ」


背中がぞわわわわっとした。こっちの口調で話しかけられたのは久しぶりだ。
たぶん松本さんがいなかったら「自分で決めろ優柔不断」の一言だろう。


「みたらしだんごは入れたいなあ。だんご粉、ちょっと高いみたいだけど」

「だんごは欲しいな。人気みたいだし」

「お茶が欲しくなるね。国産の緑茶が望ましいな」

「緑茶って結構値段……」

「わたしも賛成ー。お茶欲しいよね」

「だよね」

「……へいへい」


そんなノリで話は進み、仮決定までこぎつけた。

話が進んだことは非常に結構だが、松本さんが席をはずすことはなかったため、笠井と2人で話すことはできなかった。

大切なことだから、ってのはまあ確かにそうだが、笠井がわざわざ俺を手伝いに来るってのはどう考えても不自然だ。
俺が悩み倒すのを見て「せいぜい苦しめ」なんて言ってくる方がよっぽど自然である。


あとからわざわざ聞きに行くのもけんか売ってるみたいだしなあと考えていると、その答えはゆうかが教えてくれた。


「わたしが言ったの」


帰り道、ゆうかは俺が書いた仮決定の報告に目を通しながら言った。


「どうせわたしや笠井も確認するんだから、二度手間省けるし」


じゃあゆうかも来ればよかったのに、とは言わなかった。

今までだったら口に出してたかな、と頭の中で確認しているうちに言うタイミングを逃し、結局言葉にはならない。
最近こういうことがよくあった。


ゆうかは紙を眺め続けていて、そのまま会話もないまま寮に着いた。


「いいと思うよこれで。一応、もう一回計算しといて」

「うん」


じゃあ、と簡単に言い合って、俺たちはそれぞれの階段を上った。




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