私立秀麗華美学園
家庭科の先生にはすぐに会えて、希望の日程も通り試作のために調理実習室を使わせてもらえることになった。

予想外に順調だ。しつれーしました、と2人で家庭科室を出る。


「しかもお前、仕事デキるやつだったんだな」

「一応マニュアルみたいなもんがあるから、手順通りやってるだけだよ」

「ふーん」


そう言うと本田はさりげなくあたりを見回した。「今から人に聞かれたくない話をします」と言わんばかりだ。


「あのさあ、月城」

「ん?」

「お前、一途だよな」

「……は?」


まぬけな声を出した俺に向かって本田は続けた。


「だって花嶺さん以外の女の子に興味ねえんだろ? そりゃ花嶺さんはきれいだし、なんつーかソツがないってか、すげえんだけどさ」

「はあ、まあ……」

「月城ってさ、花嶺さんの騎士やってなかったらそこそこモテてたんじゃねえかと思うんだよな。ぱっとしねえけど優しいし爽やかだし。
一途すぎて隙がねえから女子が寄ってこねえんだろな。
ってまあほとんど亜美子が言ってたことなんだけどさ」


突然饒舌になった本田は、どうもからかっているつもりではない様子だった。

いや何様だよ、とつっこみたい気持ちをこらえて言う。


「別にゆうかのことは関係ないと思うけど」

「いーやあるね! 亜美子スコープなめんなよ!」

「いや、まあ、どうでもいいけど、ほっとけよ」


そもそも俺がゆうかに首ったけとかものすごい今更なんだよ。


「でもこれお前チャンスかもしれねえぞ」


不敵な笑みを浮かべて本田は言う。


「女子だらけの調理パート、こんだけ一途な月城にだって、隙のひとつやふたつできるかもな!」


……また、厄介なやつが登場しやがった。









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