私立秀麗華美学園
周りが女子ばっかだから隙ができる?

けっ、と思った。けっ。ばかにすんなよ。こちとら片思い10年目に突入しようとしてるんだからな。自虐だよ。

大体俺に隙ができたからって、そこにつけこもうとする物好きな女子がいるはずない。
自分のうだつの上がらなさとかぱっとしない加減とかは本田に言われなくたってわかっている。


亜美子さんの推測も気にするだけ無駄だな、と結論づけたところだったのだが。


「女子ばっかね、調理パート」


そんなタイミングでゆうかに言われると、どうしても動揺してしまった。

食堂で、久しぶりに4人で夜ごはんを食べていた時だ。
咲と雄吾の会話が途切れた時にゆうかはぽつりと言った。


「あ、でもやっぱ、みんな料理はできなさそうだった」

「へえ、そうなん? あたしもひとのこと言えんけど」

「わたしもね」

「……解せん」


山菜定食を食べる雄吾が呟いた。もうなんか50歳ぐらい年齢さば読んでんじゃねーかなこいつ。


「バイオリンやバレエより、よっぽど実用的だと思うのだが」

「……耳に痛いわ」

「あたしはどっちもやめてもーたけど」

「料理って発表会とかねーもんな」

「ああそっか、ひとに自慢できな意味ないっていう」

「家にはコックいるから出番ねーし」

「馬鹿馬鹿しいな。今更だが」


雄吾が料理をできるのはなんと父親に習ったからだと言う。

雄治朗さんのことだから、きっと家族に手料理ふるまったりしてるんだろうな。子育ての方針までイケメンだ。


「まあよかったやん、女の子だらけで華やかでさー」

「あー、うん」


否定するのも変だし別に咲はそういう意味で言っているわけではないはずなので、軽く返す。


「試作来週なんだってな。がんばれよ」

「うん」


――最近4人でいる時、ゆうかは口数が少なかった。

出方をお互いうかがっているような妙な空気は確かにあって、そもそもの原因からして俺が出るべきだとは思っていたけど。


もう少し、頑張ってからにしようと思うようになっていた。




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