私立秀麗華美学園
松本さんと相談して試作用の材料を揃え(食堂に注文したら教室まで配達してくれた)、ようやく試作の日がやってきた。


今日担当のメンバーには家庭科室に行っておいてもらい、後から材料を持って行くと、今日は女子ばっかりの日のはず……が。
なぜか全員実習室の一角に集合している、と思ったら、輪の中心にいたのは笠井だった。


俺を見た途端「やあ」と挨拶をしてくる。やあじゃねーよ、やあじゃ。

光の速さで輪の中心に突っ込んで行き、笠井の腕をつかんで引っ張り出した。


「な・ん・で・い・る・ん・だ・よ・!」

「委員長だからだな」

「バスケ部、公式戦控えてんじゃねーのかよ!」

「うちは他の部より日程遅いんで」

「大体お前主将だろ」

「サッカー部幽霊平部員に心配される義理ねえんだよ」


心底うっとおしそうに言うと、笠井は女子たちの方に視線を戻した。
一瞬で完璧な笠井くんスマイルを作り。「さあ、リーダーも来たことだし、始めようか」の一言。
もうお前、顔中の筋肉が筋肉痛になればいい。


……気を取り直して。

今日作るのはわらびもちだ。
片栗粉、水、砂糖を計量して鍋にかけ、木べらでかき回し、一口大にして氷水で冷やすという、メニューの中では一番簡単なもののはず……だったが。


「きゃっ、粉がこぼれた!」

「ねえ、この量り、おかしいわ。0にならないのよ」

「ねえ月城くん、大さじってこのぐらいのスプーンでいいの?」


100gの見当がつかず300gも入れてから袋に戻し始めるわ、物乗せるとこ押さえながら量りの電源入れるわ、「大さじ」という調理道具を知らないわ。

驚くべきことに、2つの班が全ての材料を鍋に入れるまでに20分がかかった。


「お料理って難しいのねえ」


俺も、こんなに難しいものだとは知らなかった。
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