私立秀麗華美学園
執拗にかきまわしていただけあってわらびもちはなめらかにできあがり、試作は成功と言ってよかった。


「で、これがそうなのか」

「うん」


雄吾は机にのった皿を見て言った。試作の残りを持って帰って来たのだ。


「……俺に持って帰ってきた、わけではないな?」

「…………」


何も言ってないのになんでわかるんだろう。不思議だ。きなことつまようじまで添えて、どうぞ食べてくださいという状態で置いておいたにも関わらず雄吾は口をつけていない。


「ゆうかにあげようと、思ったんだろ?」

「何も言ってないのになんでわかるんだろう」

「一緒に帰ってこなかったのか?」

「きたけど。一緒に帰ってきたけど」


残りというよりわざと余らせた分をリーダーのゆうかに渡すのに、理由はいらないはずだったのだが。


「試作してたの、ゆうかは知ってるから。いつもだったら『わたしの分はー
?』とか言ってくるような気がして」

「でも言われなかった。だから渡さなかった、と?」

「うん」


最近の感じからして、ないだろうとは思っていた。だけどやっぱり期待してしまったのだ。いつもみたいなことを言ってくれるかもしれない、と思って。

だけど実際に聞けたのは「そう、よかったわね」という一言だけだった。


「めげてるな」

「え?」

「めげてるな、和人。一途で奉仕精神に溢れてることだけがとりえだったおまえが」

「だけってさらっとなんちゅうことを」

「しかし落ち込みようは同じだな。前期の学園祭の前は、俺を持て余す側がおまえだった」

「そういえば、そうだな」

「大丈夫だ」


やけに頼もしい声に、俺は雄吾を見上げた。


「おまえは余計なことを考えず、素直でいればいい。大丈夫だ」







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