私立秀麗華美学園
雄吾が真面目に「大丈夫」と言うと、本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だった。すりこみみたいなものかもしれない。

そんなことをつらつらと休憩時間、松本さんと話していると、例の如くあの男が現れた。


「何をお話し中だったのかな?」


漫画だったら3つの弧で描けそうな笑顔を張り付けて笠井が寄ってくる。


「なんだっけ、ああ、なんか、月城くんが大丈夫って話ー」


この人俺の話聞いてたのかなと思いつつ、笑顔の殿下を怪訝な目で見る。

俺の視線などものともせずに2人は会話を弾ませた。


「今日は松本さんも参加する試作だったのよね?」

「うん。今日はおだんごだよー」

「楽しみだね。わらびもちもうまくいったしね」

「お前今日も来るつもりかよ。部活行けよ」

「部活と言えば松本さんはESS部だったね?」

「覚えててくれたのー? そうだよ、週2回だから楽ちんなの」


疎外感をひしひし感じて黙っていると、休憩が終わって、笠井が俺たちの席から離れて行った。そこに、ゆうかが駆け寄って行く。会話は聞き取れる距離だった。


「ちょっと、笠井」


笠井はやはり笑顔を崩さない。


「何かな、花嶺さん」

「……わざとやってるの?」

「ん? なんのことかな? ごめんね、授業が始まるから」


素知らぬ顔でゆうかから離れる笠井。「なんのことかな?」って、それはとぼける時の常套文句なんじゃないだろうか。

気まずそうな表情をしたゆうかはちらりとこちらを見てから席へ戻って行く。


……今の視線は、「俺がいる方向」に向けられたものだったのだろうか。


なんのことやら、さっぱりだ。
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