私立秀麗華美学園
翌日は雄吾にたたき起こされた。時刻は6時だ。待ち合わせは10時半だ。正気の沙汰とは思えない。


「いくらでもやることならあるだろう」

「4時間半も……?」

「暇なら勉強してろ。うかうかしてると学年末テストももうすぐだ」


てきぱき朝食の準備をする雄吾をぼーっと眺めながら部屋着に着替えた。あの服で朝飯食うわけにはいかないから。
羽根布団をぼふぼふ整えてから顔を洗う。なんだかんだで結構目は冴えていた。

昨日、雄吾に追い立てられるようにベッドに入ったのが12時。深い眠りと浅い眠りのインターバルが確か1時間半だから、1,5で割れる6は睡眠をとるには適切な時間だ。
なんかもうこの人こわい。


外出許可証を取りに行って帰ってくると朝食が出来上がっていたので、いただきます、と言ってから相伴に預かる。食器を洗って歯を磨いてもまだ7時半だ。


「8時に咲が来るからそのつもりで」

「なんだ、そういうことか。張り切ってるなーと思ったら」

「俺は普段通りだ」


口とは裏腹に雄吾も、ゆうかからの提案というかもはや呼び出しみたいに感じてる今回のことを、不安に思っているんだろうかと考えていたところだったので少しだけほっとする。

時間通りに咲が来た。いつも通り、ばーんと扉を開けて登場する。


「おはよー! 和人びびってへんー!?」

「な、何に」

「デートに!」


にっこにこでご機嫌だ。ツインテールをぴょこぴょこさせながら部屋に入ってくる。びびってねーよと返事をしてからゆうかの様子を尋ねた。


「いつもと変わらんと見えたけど。ああでもなんか最近、妙に優しい気がする……」

「咲、何も言わずにおいた方がいい。今の和人は不必要な想像をするしか能がないから」

「さすがにひでーよ……咲は、ゆうかの真意、知ってんのか?」

「なんっにも! デートとか聞いてあたしもびっくりしたもん! でも大丈夫やろ。和人が思てるようなんとは、全然違うと思うで」


根拠なさげな希望的観測だったが、咲が言うのなら、とその声にまた少しだけ安心したのも事実だ。
二人の会話を聞きつつ、時々まじりつつ、刻々と進む時計の針の居場所を何度も何度も確かめる。

やがて10時になったので雄吾が選んでくれた服に着替え、持ち物を確認して、ピーコートを羽織る。


「行って来い」

「行ってらっしゃーい!」

「……行って来ます」


二人の声の調子の明るさにまた少しだけ助けられ、なるべく声を張って、返事をした。

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