私立秀麗華美学園
風が強くて街路樹にあたるたびにぶんぶん唸っている。
マフラーをぐるぐるに巻いてポケットに手をつっこむ。雄吾の手袋借りてくるんだったな。


「一段と寒いねぇ」

「ゆうか、寒そう」

「ん? そう? このコート見た目より温かいよ」

「いや、脚が」


トレンチコートからすらりと伸びた脚は黒いタイツに覆われていた。けど、なんか、いつもより薄い。


「よく気づくね……。いつもより40デニールぐらい薄いんだけど」


でにーるってなんだ、と思いながら隣に並んだゆうかをちらりと見る。いつもそうだけど、ちょっと普段と違う格好で隣に並ばれると、ゆうかを直視できない。
逆に少し離れれば、睨まれるまでじろじろ見てたりするんだけど。にやにやするなって言われるくらいに。


「あと、普段と違うとこ」

「ちょっとだけ化粧してて、毛先だけ巻いてる」


ほっぺたがピンクでまつげが長くて口紅が明るい赤、と部分部分で指摘もできたけど、さすがに口に出さない。


「正解ー。案外装い甲斐があるなあ」

「脚、寒くない?」

「寒いけど。だってデートだもん。髪もメイクも手伝ってもらわずに全部自分でやったの、初めてかもしれない」


デートの一言に硬直する俺にゆうかが笑い声を立てる。っていうかたぶん、見越して言ってる。


「ねえ、そんなに気ー張らないでよ。2人で出掛けることなんてよくあるじゃない」

「……夏ぶりだけど」

「そうだっけ。年内はいろいろ忙しかったものね。そういえば、咲にカルラから手紙が来たらしくてね……」


微妙に論点をずらしたままで会話は進んで駅に到着した。休暇中ではないので列車はなかなか来なかった。

近くの大きな街といえばひとつしかないので乗り換えの駅はわかっていた。目的地を告げられないまま、とにかく街を目指す。

列車の中ではいつも眠ってしまうゆうかが、今日はずっと起きていて、少し、饒舌だった。
< 443 / 603 >

この作品をシェア

pagetop